日本内科学会雑誌
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過去10年間に診断された全身性エリテマトーデスの自然歴に関する研究
橋本 博史塩川 優一
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1982 年 71 巻 11 号 p. 1546-1552

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抄録

近年,診断技術の進歩と治療法の発達により軽症SLEが早期に診断され治療されるようになり, SLEの予後が著明に改善された.そこで,今回は1970年以降に診断されたSLE症例を用いて,経過年数による臨床病態の相違を比較検討するとともに,経過年数による臨床像の累積法の検討によりSLEの進行性の有無について考察した. 1970年以降診断されたSLE298例を検討の対象とし,診断後の観察期間により, 0~24カ月(123例), 25~60カ月(82例), 61カ月以上(93例)の3群に区分した. 1969年以前に診断された77例についても同様に区分し比較検討した. 1970年以降に診断され長期経過観察された症例は,尿異常所見,精神症状,急性腹症,血清学的異常所見などを有意に多く認め,累積法の検討からSLEの進行性が示唆された.他方,これらの症例は,短期観察例にくらべ有意に死亡率低く,免疫抑制薬使用例が有意に多いことから,この薬物による延命効果が示唆された. 1970年以降の長期観察例では,感染症と無菌性骨壊死の合併を有意に多く認め,前者は腎病変と同等に主たる死因であつた.一方, 1969年以前に診断され長期観察された症例は,レイノー現象が有意に多く,多量蛋白尿と精神症状が有意に少なく,比較的軽症例が多いと考えられた.今後,軽症のみならず重篤な臨床病態をもつ長期生存SLE例が増加すると考えられる.

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