抄録
非特異性多発性小腸潰瘍症の2名の女性患者が持続性の腸管出血による重篤な慢性の貧血のため, saccharated ferric oxide (SFOと略) (商品名Fesin)の経静脈投与をうけた.症例1ではSFO 80mg/日の連日静注をうけて約3カ月後から骨痛が出現し,症例2ではSFO 40mgの間歇的静注をうけて約9年後に骨痛が出現した.いずれも著明な低リン血症と肋骨の偽骨折が認められ,骨軟化症と診断された.症例1ではSFOの投与を週1回40mgに減量後,症例2ではSFOの投与を中止後,血清リン値の増加とともに骨痛は消失した.以上より, SFOが骨軟化症を惹起したと考えられた.