日本内科学会雑誌
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Gold nephropathyの1症例X-ray energy dispersive analysisによる腎組織内gold沈着の証明
海津 嘉蔵丸岡 啓一織田 悦子織田 進小野 明岡崎 勲千葉 省三江藤 澄哉鈴木 秀郎
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1982 年 71 巻 3 号 p. 364-372

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抄録

慢性関節リウマチに対し用いられている金製剤による腎障害は, gold nephropathyとしてよく知られているが,その詳細な機序は殆ど不明である.特に腎組織内に沈着した金の証明は困難で,確実に証明された症例はきわめて少ない.今回, X-ray energy dispersive analysis (XEDA)により,生検で得られた腎組織内に金の沈着を証明しえたので報告する.対象は, 63才,女性, 56才時慢性関節リウマチと診断され,金製剤(gold sodium thiomalate)を32ヵ月計2.200mg投与された.投与開始31ヵ月後に尿蛋白は陽性となり, 1g/日前後の蛋白尿が持続した.腎生検を行ない.光顕,蛍光,電顕により組織学的に検索した.金元素の局在はKevex7000を用いXEDAにより観察した.光顕的には殆どの糸球体に増殖性変化がみられ,係蹄内にamyloidの沈着を認めた.金はelectron denseで糸くず構造の集族として認められ,近位尿細管上皮細胞内に多かつたが, brush border,間質および糸球体のメサンジウム内にも広く分布しているのが観察された.これらの糸くず構造はXEDAにより金のL-α1, L-β1およびL-β2と一致するピークを示し,金元素である事が確認された.現在までに内外でXEDAによつて金の沈着を証明しえたのは,本症例を含め6編しかない.しかも,このように広範囲に分布したのはこの報告のみである.投与された金は投与中止後も血中の陽性が持続し,金が腎に沈着するのみでなく体内を長く循環している事が示唆された.

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