日本内科学会雑誌
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新生児期原発性副甲状腺機能亢進症を伴つた家族性低カルシウム尿症性高カルシウム血症の1家系
渡辺 直也山内 康平松本 純治坂口 和成深瀬 正晃筒泉 正春深見 降則今井 康雄藤田 拓男
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1982 年 71 巻 4 号 p. 479-484

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抄録

家族性低カルシウム尿症性高カルシウム血症の報告例は,日本ではまだ非常に少ない.今回我々は,重症の新生児期原発性副甲状腺機能亢進症を伴つているという点で,本邦における最初の家系を報告する.患者は31才男性で,家族歴では本人を含め4人の高カルシウム血症を認めた.特に次女は,生後2日で高度の哺乳障害,呼吸困難を認め,新生児期原発性副甲状腺機能亢進症と診断された.患者自身はほとんど無症状であつたが,次女の原発性副甲状腺機能亢進症のため,家族スクリーニングにより高カルシウム血症を指摘された.入院精査の結果,原発性副甲状腺機能亢進症と診断され,副甲状腺亜全摘術を施行されたが,高カルシウム血症は改善しなかつた. s-Ca 11.7mg/dl, s-P 2.3mg/dlと高カルシウム低リン血症を示したが,血中PTHは0.58ng/mlと軽度上昇を認めるのみで, s-Mg, ALPはいずれも正常範囲であつた.尿中Ca排泄は, 107mg/dと高値を示さず, TmPo4/GFRは2.5mg/dl, %TRPは84%と,いずれも正常~やや低値を示し,カルシウム・クレアチニンのクリアランス比(Cca/Ccr)は, 0.006と低値を示した.その他,骨格系の検査や内分泌学的検査では,多発性内分泌腺腫症を示唆するような著明な異常を認めなかつた.家族性低カルシウム尿症性高カルシウム血症は,まだ未解決のところが多いが,本症の診断は,単なる診断と治療の医学から,予防・公衆衛生のレベルまで進んだ重要な意義を有すると考えられる.

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