日本内科学会雑誌
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Pancreas divismの4症例
吉利 味江子菊地 一博柴田 晴通牧野 孝史瀬上 一誠野見山 哲原沢 茂三輪 剛
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1982 年 71 巻 9 号 p. 1301-1307

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抄録

心窩部痛,心窩部不快感,下痢などを主訴として来院し,内視鏡的逆行性膵管造影(ERP)にて短小膵管像を呈した4例を経験した.腹側膵管と背側膵管の癒合不全,すなわちpancreas divismの発生頻度はごく少なく,当院の集計でも,昭和50年5月から昭和56年5月までの6年間に施行したERP 550例中4例で, 0.7%の頻度であつた.男女比は1:3,年令は41才から63才までで平均年令は50.8才であつた.検査所見としては,尿および血清アミラーゼ活性,膵外分泌機能検査(pancreatic function diagnostant: PFD), 50g糖負荷試験(50g oral glucose torelance test: 50g 0GTT)についておのおの2例(50%)のみに異常が認められたが, 50g 0GTTにおけるimmune reactive insulin (IRI) 30分値は全例で低下していた.膵石を認めるものはなく, ERPにて腹側膵管は全例とも正常であつた.背側膵管はERPにて2例,腹部コンピューター断層撮影(CT scan)にて1例,合わせて4例中3例に軽度の膵管の拡張を認めた.本症の臨床症状は慢性背側膵炎によるものであり,膵液量と機能の悪い副乳頭との間に生じる相対的閉塞状態が背側膵炎の発生に関与しているものと思われる.よつて本症の発見には,副乳頭へのcannulationあるいはCT scan,超音波での膵体尾部の検索が重要である.

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