日本内科学会雑誌
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体表面電位図より求めた心双極子分析の臨床的応用正常例の検討
綱川 宏
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1983 年 72 巻 1 号 p. 25-37

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抄録
近年,体表面電位分布から心表面電位分布を求めようとする心電図逆問題解が幾つかの手法で行なわれているが,その生理的検討はいまだ十分でない.今回我々は27例の正常男子を対象とし,先にOkamotoらが開発した手法を用い,体表面電位分布から双極子の位置と成分および,推定双極子で説明し得ない体表面電位部分を非単一双極子成分(残渣)とし,これを2msecごとに経時的に求めた.結果: (1)QRS波の残渣は24.0±3.5%, QRS前半では21.3±3.8%,後半では26.5±4.9%で, 23例(85%)では後半の残渣が高値を示した.残渣曲線上, 27例中11例ではQRS開始より24.4±6.7msecに, 25例では46.4±8.1msedこ急峻なピークを形成した. QRS波の瞬時主双極子は,ほぼ全例心臓の位置するあたり12cm以内を時計方向に移動した. (2) ST-T波の残渣QRS波より安定して低値をとり, ST部では20.1±2.8%, T波では18.9±3.1%であつた. T波の頂点付近50msecの時間帯での主双極子は全例ほぼ心臓の位置するあたりにあり,移動範囲は2cm以内であつた.以上より,正常者のQRS波のかなりの部分は単一双極子で代表し得るが,初期と後半には非単一双極子成分が増大し,多双極子的となることが示唆された.またST-T波はより単一双極子的であり,双極子が固定していたことより,心室再分極過程は比較的固定した単一双極子で代表し得る可能性が示唆された.
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