ω3系の多価不飽和脂肪酸の一つであるエイコサペンタエン酸(C
20:5ω3, EPA)は,エスキモー人についての疫学的研究や内外の実験結果から,抗血栓,抗動脈硬化作用を有することが示唆されている.しかし,現在までの臨床実験は,対象者の日常生活に種々の制約を加えたり,他の食品を犠牲にして魚を大量に摂取させており,今日の一般的食生活の立場からのEPAの実際的な効果や有用性については十分な検討がなされていなかつた.今回,我々は,日常生活を規制しないで, 20~50才台の健康成人男女各6名を男女別々に3名ずつ, at randomに,精製してEPAの濃度を高めた魚油を与えた実験群(エチルエステルの形でEPAとして1日2.0g投与)とタラの肝油を与えた対照群(トリアシルグリセロールの形でEPAとして1日0.37g投与)とに振り分け,二重省検法により4週間の長期投与を行ない,以下の結論を得た. 1)実験群では,前値に比し,血清コレステロールが有意に低下し,トリアシルグリセロールも低下傾向を示した. 2)両群共に,前値に比し,血漿および血小板リン脂質のEPA/アラキドン酸比(C
20:4ω6, AA)は有意に上昇した.特に実験群では,対照群より有意な上昇を示した.しかし, 3)血小板凝集能については,実験群で,最終凝集惹起濃度0.5μg/mlのcollagenでの最大凝集率が低下傾向を示したに過ぎなかつた.このことからEPAの血小板凝集能抑制効果は著明ではないと考えられ,さらに投与量を増した臨床治験を要すると思われる.
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