日本内科学会雑誌
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Chlorpropamideによる低ナトリウム血症
門脇 孝羽倉 稜子梶沼 宏葛谷 信貞吉田 尚
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1983 年 72 巻 5 号 p. 537-546

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抄録

我々は最近, chlorpropamide投与により著明な精神症状を伴う低ナトリウム血症をきたした糖尿病の1例を経験した.症例: 67才,女性.糖尿病,高血圧に対し,長期間glibenclamide, trichlormethiazideの投与を受けていた.糖尿病のコントロール不十分のためchlorpropamide 500mgに変更後7日目より著しい全身倦怠感と異常行動が出現し,検査成績上著明な低ナトリウム血症(113mEq/l)を認めた.そこで, chlorpropamideを中止し, tolbutamideとbiguanide次いでglibenclamideに変更したところ, 6日後には血清ナトリウムは140mEq/lと正常化し,諸症状も消失した.他3症例でも同様に本薬投与により低ナトリウム血症を示し,他薬への変更によつて回復,再投与により再び低ナトリウム血症を示したので典型例として呈示した.次にchlorpropamideを投与中の176名のretrospectiveな調査により, 11名(6.3%)に129mEq/l以下の低ナトリウム血症を認め,対照としたglibenclamide, tolbutamide, trichlormethiazide各投与群に比し明らかに高率であつた. chlorpropamide投与群において,高令および利尿薬併用が低ナトリウム血症の危険因子と判明した.また,低ナトリウム血症の成立にはSIADH様の機作が関与している可能性が推定された. chlorpropamideは効果的な経口血糖降下薬の一つであるが,殊に高令者および利尿薬併用の場合には低ナトリウム血症の出現に配慮する必要がある.

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