日本内科学会雑誌
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心筋梗塞におけるベクトル心電図の検討
益海 信一朗春見 建一
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1983 年 72 巻 9 号 p. 1150-1158

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抄録

ベクトル心電図により心筋梗塞範囲の推定が可能かどうかを検討することを目的として,陳旧性前壁中隔側壁梗塞について近年心筋梗塞範囲定量に有用性が高いと考えられている201T1心筋血流シンチグラム所見とベクトル心電図を対比し,両者の一致率を検討した.対象は,入院にて急性期を観察した前壁,前壁中隔,前壁側壁,前壁中隔側壁心筋梗塞の32例で,全例に陳旧期に201T1心筋血流シンチグラム, Frank誘導ベクトル心電図を施行.心筋血流シンチグラム欠損の大きさとVCG諸パラメータを比較した.結果, 1)心筋血流シンチグラム欠損の大きさと20m sec, 25m sec, 30m sec瞬時梗塞ベクトルの大きさとの対比では, 20m sec梗塞ベクトルの大きさが最大の相関を示した(γ=0.686, p<0.001). 2)心筋血流シンチグラム欠損の大きさと20m sec瞬時ベクトルの方位角および水平面QRS環最大ベクトル方位角との関係では,側壁梗塞,右脚ブロックの4例を除いた検討では,心筋血流シンチグラム欠損の大きさが大になる程,両ベクトルの方位角は右前方から左後方に向かいその相関はγ=0.743, p<0.001; r=0.705, p<0.001と高い値を示した.前壁心筋梗塞範囲の推定の指標として, 20m sec梗塞ベクトルの大きさ, 20m sec瞬時ベクトル方位角,水平面QRS環最大ベクトル方位角等,ベクトル心電図諸パラメータは,臨床上有用と考えられた.

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