日本内科学会雑誌
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肝に脂肪沈着を示した家族性低βリポ蛋白血症の1例
大西 真児玉 龍彦金森 博森山 貴志岩崎 泰彦板倉 弘重大久保 昭行高久 史麿福里 利夫油谷 浩幸
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1984 年 73 巻 5 号 p. 676-679

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抄録

肝に脂肪沈着を示した家族性低βリポ蛋白血症の1例を報告する.症例は28才,男性.生来健康で自覚症状無く,昭和56年11月,健診で肝障害と低コレステロール血症を指摘され入院.身長161cm,体重64kgで理学的に特記すべき所見無く,血中総コレステロール89mg/dl, GOT45U/l, GPT105U/lであつた.腹腔鏡では,表面平滑な黄赤色肝で,組織像では主に小葉中間帯に著明な脂肪沈着を認めた,超遠心法による血中リポ蛋白分析では, LDL (low density lipoprotein)コレステロール38.7mg/dl, HDL (high density lipoprotein)コレステロール43.1mg/dlとLDL分画の減少を認め, LDLアポB16mg/dlと正常の約1/3に低下していた.父親の総コレステロールは130.2mg/dl, LDLコレステロールは67.9mg/dlと低下していた.本例には,肝硬変等の肝実質障害や栄養不良は無く,家族性低βリポ蛋白血症と考えられた.脂肪負荷後の血中トリグリセリドと小腸由来のアポB48は,正常者と同様に増加しており,小腸からの脂肪吸収には障害は無く,肝からのリポ蛋白分泌障害が,肝に脂肪沈着をきたしたと考えられる.

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