日本内科学会雑誌
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高率に心電図異常を伴つた流行性筋痛症についての研究
新谷 宇一郎小村 明夫杉浦 武足立 和秀東 英敬福喜多 茂夫羽場 文彦大内 由雄高橋 彰鈴木 司郎
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1985 年 74 巻 10 号 p. 1386-1394

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抄録

1983年3月,一矯正施設において3名の突然死と収容者の57% (388/678名)に流行性筋痛症の発生がみられた.主要臨床症状は感冒様症状(62%,微熱,関節痛など),筋肉痛(53%),循環器症状(45%,動悸,狭心痛,体動時呼吸困難など),消化器症状(26%,下痢,腹痛,嘔吐など)などであつた.なお呼吸器症状はほとんどみられないという特徴があつた.同時期に職員の17%に本疾患の発生がみられた.心電図検査で40%に達する種々の異常がみられた.洞性頻拍93名,期外収縮16名,心房細動8名,房室ブロック7名(I度4名, II度3名), P波幅延長(>0.12秒) 16名,低電位3名,高電位(S1+R5>4.0mV)16名, ST上昇24名などであつた.心房細動と房室ブロックの全例は特に治療も必要とせず正常に復し,また他の心電図異常を示した大部分の者も数週間以内に正常化した.突然死した3名は法医解剖がなされ,うち1例において心筋炎の組織像が得られた.血清学的検索において25名中17名(68%)がコクサッキー・ウイルスB3に対する有意の中和抗体価の変動,または高抗体価を示した.すなわち, 9名で4倍以上の変動, 5名で512倍以上, 3名で128倍以上の高抗体価がみられた.以上の結果から,本疾患はコクサッキー・ウイルスB3による感染症で,臨床的には高率に心電図異常を伴つた流行性筋痛症であつたと考えられた.

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