日本内科学会雑誌
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末梢神経障害に血漿交換療法が著効を呈した悪性関節リウマチの1例
伊藤 光泰遠藤 茂樹福間 尚文船内 正憲木佐森 茂樹広岡 良文仁瓶 禮之山崎 昇
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1985 年 74 巻 3 号 p. 307-313

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抄録

悪性関節リウマチに末梢神経障害はよくみられるが,難治性で適確な治療はいまだ確立されていない我々は悪性関節リウマチの経過中に末梢神経障害を併発し,血漿交換療法によつて軽快した1例を経験した.症例は51才の女性で, 13年前より慢性関節リウマチの診断を受けステロイド薬等で加療されていたが, 2年前に突然両足の運動・知覚障害を呈し来院した.両上下肢末端優位の筋力低下,両足外側部に強い知覚障害,筋萎縮,および下肢の紫斑,点状出血を示し, RAテスト(2+),血沈亢進,血清補体価の低下,抗RNP抗体,抗核抗体陽性,多クローン性免疫グロブリン,血中免疫複合体の上昇を認めた.皮膚・神経生検にて腓腹神経の脱髄像と皮下組織に多発性小動脈炎を認めた.血漿交換を3日間連続して行なつたところ,知覚障害,筋力の回復と共にサーモグラフィー,指尖脈波の改善を認めた.血清免疫学的にはγグロブリン,抗RNP抗体,血中免疫複合体の低下,血沈,リンパ球幼若化反応の改善をみた. 2週後には自覚症状,検査成績は血漿交換前の状態に戻つたためさらに2クールの血漿変換を施行した. 3クール目の血漿交換施行後には症状,検査成績は改善し,再発を認めなかつたため退院した.悪性関節リウマチに随伴した末梢神経障害に血漿交換が有効であつたことから,血中免疫複合体等の液性因子の関与が示唆された.

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