日本内科学会雑誌
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異所性再発をきたした家族性褐色細胞腫の小児の1例
湯浅 伸郎浅野 浩山根 至二三橋 慎一
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1985 年 74 巻 8 号 p. 1125-1132

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抄録

15才の女性,褐色細胞腫の濃厚な家族歴を有し, 5年前に当院において両側副腎および腹腔内2カ所の異所性褐色細胞腫の摘出を受けている.術後2カ年余は尿中catecholamine値は正常に復していたが,その後次第に増加を示し, 5年後に至つて臨床症状も顕著となつたため再入院.検査の結果,左腎下極前面と左後縦隔洞に異所性褐色細胞腫を認め,その何れもを摘出して臨床症状も消失し,尿中へのcatecholamine排泄も正常化して,術後2年の現在健康に生活している.小児の褐色細胞腫は最近報告が増えつつあるが,本邦においては51例に過ぎず,また家系内発生は17家系が報告されているのみである.また胸郭内発生褐色細胞腫は本例を含めて7例に過ぎず,再発性褐色細胞腫の報告は6例に過ぎない.また同一患者で前後に6コの褐色細胞腫を発見された例はStackpoleらの報告の1例があるのみである.本症例は家族性,異所性多発性,若年発生,胸郭内発生,良性再発性という点において極めて珍しい症例というべく,未だ内外の文献上にこの様な報告を見ない.

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