1987 年 76 巻 9 号 p. 1444-1448
症例は56才,女性.昭和59年3月,失語症が出現し,左前頭側頭葉に梗塞所見があり入院した.その後外来で血小板凝集抑制薬を投与し経過観察中, 6月に再び失語症が出現し, CTで新たに左側頭葉に梗塞所見があり再入院した.脳血管造影を施行後, 3日自と12日目に2回の脳梗塞再発作が出現した.この間血液凝固学的には慢性DICの所見を呈し,原因を検索した結果,卵巣癌が発見された.急性DICに脳血管障害が合併する事は良く知られているが,慢性DICによる脳血管障害の報告は少なく,本例を含め6例の報告しかない.一方本症例では,特に脳血管造影後に慢性DICの急性増悪を示し脳梗塞再発の誘因になったと考えられた.