日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
妊娠によりthyroid stimulating hormone (TSH)高値を呈したクレチン症の1例
大島 喜八高橋 京一馬原 充彦小内 亨岡田 秀一小林 節雄小林 功
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 77 巻 3 号 p. 399-403

詳細
抄録

症例は28才.生後3カ月にクレチン症と診断され,舌根部甲状腺を有していた. TBG異常は無く,サイロキシン(l-T4)100μg/日の内服で甲状腺ホルモンレベルは正常に保たれ妊娠した.血中TSHは妊娠経過と共に上昇し, 26週には121μU/mlに達し, l-T4200μg/日への増量で正常値に向かい,満期正常分娩を迎えた.妊娠経過中,血中T3,フリーT3はやや低値を呈し, T4,フリーT4l-T4 200μg/日投与以降に高値を持続した.本症例を通じて,クレチン症妊娠時の甲状腺薬補充量決定の指標にはTSH値が最も有用と考えられた.現在までにクレチン症における妊娠中の甲状腺ホルモン値の経時的変動や治療の報告は少なく,貴重な症例と考え,報告した.

著者関連情報
© (社)日本内科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top