1988 年 77 巻 4 号 p. 520-523
特発性副甲状腺機能低下症に甲状腺機能亢進症(バセドウ病)を合併した1例を経験した。症例は52才,男性.手指・顔面筋のひきつり,痺れ感で発症し,低カルシウム血症を伴っていたため,副甲状腺機能低下症の診断でビタミンD剤の投与が開始された.その後,手指振戦,発汗過多等の甲状腺機能亢進の症状が出現し始め,抗甲状腺薬が投与された.両疾患の合併は,多腺性内分泌腺不全症に属するものと思われるが,極めてまれであり,世界でも5例しか報告がなく,また男性発症は世界で初である.発症機序は明らかではないが,自己免疫学的機序の関与が示唆された.