1988 年 77 巻 4 号 p. 568-571
Parasitic rheumatismと考えられた糞線虫症の1例を経験したので報告する.症例は20才,男性,ベトナム人.昭和58年,某院で慢性関節リウマチを疑われ,大量のステロイド薬を使用にて軽快.しかし著しい下痢が出現したため,当科に入院した.リウマチ反応は陰性, HLA-B27陽性であった.糞線虫が証明されたため駆虫療法を開始し,腹部症状は軽快したが,関節症状は増悪した.滑膜生検で,非特異的慢性炎症所見が認められた.なお,糞線虫に対する抗体は陰性であった.本例はDouryらのparasitic rheumatismの診断基準に合致した.発症機序に関しては,免疫複合体が重要と考えられた.一方, HLA-B27が陽性であり,発症ならびに進展に遺伝的な因子の関与も考えられた.