日本内科学会雑誌
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3.消化性潰瘍の症状
朝倉 均秋山 修宏坂内 均本山 展隆
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1991 年 80 巻 1 号 p. 18-21

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抄録

胃・十二指腸潰瘍の臨床症状につき,主に自覚症状について自験例を参考にして解説した.心窩部痛を主訴とする者が最も多く,空腹時あるいは夜間に痛みを訴えるものが多かった.また,十二指腸潰瘍では胃潰瘍に比し空腹時痛を訴える症例が有意に多く認められた.その他背部痛,食欲不振,悪心,タール便などの症状も多く認められた.無症状のものも胃潰瘍で16.2%,十二指腸潰瘍で9.7%認められた.胃潰瘍では,若年者ほど症状を認めるものが多くかつ症状の程度も強かった.高齢者では痛みを訴える頻度,程度も減少し無症状の者が多く認められた.潰瘍のステージ別に症状の変化を見ていくと当然のことながら潰瘍の活動期には痛み,出血症状,悪心・嘔吐,などの症状が多く,治癒期の潰瘍では無症状のものが多かった.抗潰瘍薬を投与されている症例でも潰瘍の再発するものがあるが,そのうち多くは無症状かほとんど症状の無いものであり重篤な症状を認めたものはなかった.高齢者,非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)投与例では活動期の潰瘍を有しながら無症状のものもあり,潰瘍の診断が困難な事もあり注意すべきである.

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