1992 年 81 巻 5 号 p. 603-609
主として胃と大腸に好発する消化管ポリープは,消化管検診の普及に伴って増え続けている.わが国では「粘膜面から内腔に向かって限局性に隆起する病変」を,一般にポリープと総称し,最初から明らかに癌とわかる隆起性病変は除外する傾向にある.胃ポリ一プの分類には,組織学的所見とは関係なく,肉眼的に分類される山田・福富の分類と臨床病理学的観点から分類を試みた中村(卓)分類が用いられている.最近, WHOより提案され,胃への応用も試みられているdysplasiaの概念(診断基準)についても触れた.一方,大腸ポリープは組織学的に腫瘍性ポリープ(腺腫)と非腫瘍性ポリープに大別されるが,本稿では癌化のポテンシャルの高い腺腫に焦点をあて,その組織学的分類と腺腫の癌化をめぐる遺伝子レベルの研究動向についても付言した.