日本内科学会雑誌
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遺伝子診断と治療
鎌谷 直之
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1993 年 82 巻 4 号 p. 598-604

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抄録

近年,目ざましく進歩した遺伝子工学(分子生物学)技術は, 1980年代後半になって臨床応用の段階に入った.なかでも,注目されているのは遺伝子診断と遺伝子治療である.遺伝子診断が急速普及した背景にはPCR (polymerase chain reaction)技術の登場が大きく,遺伝病の確定診断,早期診断,保因者診断,出生前診断だけでなく,癌の診断や微少残留悪性細胞の検出などで威力を発揮している.さらには結核などの細菌感染症やHTLV-I,肝炎ウイルスによる感染症の診断の分野でもPCR技術を応用した微量病原体の検出が広く応用されている.遺伝子治療にはgermline遺伝子治療と体細胞遺伝子治療があり,後者のみが倫理的に許される.米国ではすでに遺伝病(ADA欠損症)と癌で体細胞遺伝子治療が実施され,遺伝病においてはその有効性が発表されている.他の国(中国,欧州の各国)もこれに続いており,我が国もようやく遺伝子治療の基準づくりへと動きだした.

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