1993 年 82 巻 5 号 p. 632-638
炎症性腸疾患の基本検査の主な目的は,血中の炎症反応と腸管病変の形態学的異常を捉えることによって病態を把握し診断につなげていくことである.血液,生化学検査では炎症反応と続発性の異常をつかみ,糞便検査と内視鏡検査, X線検査によって診断と病態を明確にしていく.診断手順のなかで最も重要な部分は,早期に(初診時に)大腸前処置なしで直腸からS状結腸を観察し潰瘍性大腸炎でないかどうかをまず診断することである.免疫学的検査は疾患特異性に乏しい.腹部超音波検査が腸管壁の強い浮腫を捉えるのに役立つときがあり,大腸結核の迅速な診断にはPCR法が有用である.