1997 年 86 巻 7 号 p. 1269-1274
トロンボポエチンは最近発見された血小板産生を調節する造血因子である.トロンボポエチンは巨核球系前駆細胞に作用し,巨核芽球への分化を誘導し,さらに巨核球の成熟を促す作用がある.トロンボポエチンの産生部位は肝細胞と腎の近位尿細管細胞である.トロンボポエチンの血中濃度は血小板数が減少すると高値になり,血小板数が増加すると低下する.その機序は主に血小板がトロンボポエチンを吸着することによる.ただし,巨核球が増加するような血小板減少症ではトロンtボポエチンの増加は顕著ではなく,それは巨核球によるトロンボポエチンの吸着が関与している.現在,トロンボポエチンの臨床応用を目指した治験が進行中である.トロンボポエチンの第I/II相試験の結果が発表されたが,血小板増加効果は明らかで大きな副作用がないという結果である.