日本内科学会雑誌
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吸収不良症候群を呈し発見された慢性膵炎の1例
山下 太郎月岡 幹雄荻野 英朗里村 吉威中川 彦人鵜浦 雅志青木 周一
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1997 年 86 巻 8 号 p. 1451-1452

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抄録

症例は60歳,男性.日本酒3~5合×35年の飲酒家,平成7年4月より下腿浮腫,腹水が出現し,精査目的に入院.心,肝,腎機能正常で血清蛋白5.2g/dlと低蛋白血症を認めた.一方消化吸収試験においてα1-アンチトリプシンクリアランスは保たれていたが,脂肪吸収障害があることより吸収不良症候群と考えられた.その原因として消化管粘膜に異常なく腹部CTでの膵実質の萎縮,石灰化の存在,さらに膵酵素薬投与で浮腫,低蛋白血症が改善したことより慢性膵炎に伴う膵外分泌機能低下によるものと考えられた.原因不明の低蛋白血症においては,腹痛や脂肪性下痢等を認めない場合でも,鑑別診断に慢性膵炎を念頭に置く必要があると考えられた.

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