日本内科学会雑誌
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慢性炎症と貧血-鉄代謝ホルモン ヘプシジン
高後 裕生田 克哉
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2005 年 94 巻 6 号 p. 1158-1164

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抄録

炎症性貧血anemia of infiammationは,慢性疾患貧血anemla of chronic disorder (ACD)とも呼ばれる病態で,感染症,リウマチやSLEなどの自己免疫性疾患,潰瘍性大腸炎やCrohn病などの炎症性腸疾患,各種悪性腫瘍など様々な疾患で認められる.共通して言えることは,多くが炎症を基盤として,正球性正色素性貧血で,時に小球性低色素性貧血のパターンをとり,鉄欠乏性貧血との鑑別が重要となる.検査所見として,血清鉄の低下,総鉄結合能の低下,トランスフェリン飽和度はやや低下した状態で,血清フェリチンは上昇することが多く,網内系への鉄蓄積による骨髄赤血球産生における鉄代謝異常が存在する.従来から,この病態を形成する原因として, IL-1, IL-6, TNFなどのサイトカインが関与すると考えられていたが,最近,新たに発見された肝臓由来の抗菌ペプチドであるヘプシジンにより,炎症性貧血における網内系鉄ブロック(RES iron block)の病態を説明することができることが明らかになった.

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