国立アイヌ民族博物館研究紀要
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白老地域のアイヌ工芸について─松永八重子資料を中心とした検討─
八幡 巴絵
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2025 年 2024 巻 3 号 p. 6-23

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抄録
北海道白老町に2018年まで開館した一般財団法人アイヌ民族博物館1)(以下、旧アイヌ博)では、工芸を専門として行う職員が勤務し、職員らが製作した民具の一部は資料番号が付与され、収蔵庫にて保管され、儀礼などの伝承活動や博物館の展示に使用した。2024年現在、それらの資料は2020年に開館した国立アイヌ民族博物館の収蔵品となっている。本稿では、その前身となる白老民俗資料館(以下、資料館)、旧アイヌ博における工芸技術の系統、参考とした原資料、複製事業に関することについて、元職員らへの聞き取り調査を行い明らかにする。 本稿では、ポロトコタンと呼ばれた資料館、旧アイヌ博に1978年から2002年に勤務した松永八重子(まつなが・やえこ)に焦点をあてる。検討手法は、松永の同僚や松永が主宰したサークル「チタㇻペ」に所属している人たちを対象とした聞き取り調査を行い、松永の経歴や工芸技術の系統について整理をした。さらに国立アイヌ民族博物館収蔵の、松永が製作した資料や松永旧蔵の資料のなかで、衣服とござを対象とし、松永が指導を受け習得した技術や、それが松永からどのように伝承されてきたかを明らかにした。それらの情報から、ポロトコタンを起点とし白老町に広がった工芸活動のなかで、松永が関与した衣服、ござの製作技術について考察し、今後の松永が製作した資料に関する課題を述べるものである。
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© 2025 本論文著者
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