国立アイヌ民族博物館研究紀要
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2020 年以降のマユンキキの現代的芸術表現 : シドニー・ビエンナーレ「NIRIN」から東京都現代美術館「翻訳できないわたしのことば」展まで
谷地田 未緒
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2025 年 2024 巻 3 号 p. 34-78

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抄録
本稿は、アーティスト・マユンキキの2020年から2024年の活動に焦点を当て、⾳楽・舞台芸術・現代美術の⽂脈からその活動を読み解くものである。マユンキキはミュージシャンとしてキャリアをスタートさせると同時に、アイヌ語・アイヌ⽂化の専⾨家として講師やアドバイザー活動を実施してきたが、2020年のシドニー・ビエンナーレを境に現代美術作家としてキャリアを躍進させている。本稿では同展に加え、石巻のリボーンアート・フェスティバル(2021‐22年)、英国バーミンガムのIkonギャラリーでの個展(2022年)、東京都現代美術館「翻訳できない わたしの言葉」展(2024年)等の主要な現代美術展を振り返るとともに、ラウテンシュトラウホ・ヨースト博物館(ドイツ)や北海道博物館、ウィリアムモリスギャラリー(英国)などの博物館展示へ介入する作品、近年の実験的な⾳楽活動、そしてパワーハウス・ミュージアム(オーストラリア)の主導で出版された『Galang』等の出版・執筆活動について網羅的に分析した。結論として、マユンキキの芸術表現が表現の脱植民地化/先住民化という概念に根ざしていることを確認し、また非先住民/和人研究者が提唱する「アイヌ・アート」という概念が含む問題点について指摘した。
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© 2025 本論文著者
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