教育方法学研究
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カール・オルフの「Music for Children」における映像の分析 : 音楽経験の発展性に焦点をあてて
下出 美智子
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2003 年 28 巻 p. 131-139

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抄録

研究目的は,映像「Music for Children」において,子どもの音楽経験はいかに発展したのか,また,そこで子どもの内面はどう育まれたのか,ということを明らかにすることである。この映像はオルフの教育哲学が直接的に現れていると言う意味で貴重な資料となる。ここではCarl Orff自身が台本を作成し,音楽プロデューサーをオルフの弟子でありオルフ教育の協力者であるGunild Keetmanがつとめている。演奏は後にオルフ研究所が設立されることとなるMozarteumの学校の生徒達が行っている。研究方法として,子どもが歌ううたやことば,動きや踊り,楽器演奏を聴取して楽譜として記す。同時に,子どもの活動する様子や表情を記録する。その記録を1.活動では子どもはどのように音楽経験を行ったのか,という視点から分析する。また,2.そこで子どもの内面はいかに育まれたのか,ということをビデオの子どもの姿から推察する。その結果,次のことが明らかになった。1 子どもの音楽経験の発展性・「Music for Children」では,どの段階でもことば・動き・音という媒体の一体化した活動が扱われた。それは(1)わらべうたから始まって,(2)打楽器を中心としたアンサンブルを経て,(3)更に音楽と踊りの一体となった活動へ発展した。・音楽の構成要素における音楽経験は,小さな単位から大きな単位へ,単純なものから複雑なものへと系統的に発展した。2 子どもの内面の育ち活動を通して子どもは情動を育み,楽器の音色が醸し出す雰囲気や,曲や踊りが持つ感情的な内容を掴みとったと推察される。

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© 2003 日本教育方法学会
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