教育方法学研究
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保育場面において遊びを捉える保育者のまなざし : "遊び集団を捉える"ことを困難にしているものは何か
菊池 里映
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2006 年 31 巻 p. 25-36

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抄録

現在の幼児教育において子どもたちは"主体的な活動"を,"自発的な活動としての遊び"を通して達成することが目指されており,それを達成するにはインフォーマル集団としての遊び集団を子ども達が形成できるように保育者が援助を行うことが必要であると考えられる。そのためには遊びというものが,「遊ぶもの」としての個人が負っているものとして理解されるのではなく,遊びという文化を遊びの集団的事象全体の状況性が構築しているものとして理解されることが必要だが,そのような理解の方法はまだ保育研究の上でも,実践の上でも十分にはみられない。本稿では特に実践中の保育者が遊びを集団的事象として捉え,その状況性が構築する文化を理解することがなぜ困難なのかを明らかにすることを目的として調査を行った。結果,保育者は実践中に遊びの理解を行う際に,遊びの集団的事象全体に対してある固定的な見方での理解を行うために,その遊び全体への援助の糸口がみえづらくなり,援助を行う際の指標として見出されるのが「遊べない」として評価される個人であるという傾向があることが明らかになった。これは,集団的事象に対する「子どもが集団となって遊んでいるとはこういう状態」という固定的な見方,子ども個人に対するこの子どもは「遊べている」「遊べていない」という固定的な見方という,集団と子どもの関係性の見方の絶対化がみられる状態と考えられた。

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© 2006 日本教育方法学会
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