教育方法学研究
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国民学校の低学年教科書の編纂に関する一考察 : 「教科書調査会」の役割に着目して
井上 兼一
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2006 年 31 巻 p. 109-120

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抄録

本稿の目的は,1941年4月に発足した国民学校の低学年教科書の特質について明らかにすることである。1937年12月に設置された教育審議会は,わが国の教育制度を全面的に改革するために設置された。国民学校については,「幹事試案」の提出を契機として,綜合教授をめぐる問題とともに,「綜合教科書」を編纂することが審議された。そして,一冊の教科書の中に,複数の教材(例えば,修身,国語,歴史,地理など)を含んだ教科書が編纂されることになった。本稿では,以下の手順に従って,教科書の編纂について探求する。1つに,教育審議会における「綜合教科書」の構想をめぐる審議経過について整理する。2つに,「答申」可決後の文部省の動向として,文部省図書局や教科書調査会が決定した教科書編纂の方針とその活動について検討する。3つに,文部省図書局から教科書調査会に提出された低学年教科書の原案について分析する。結局のところ,図書局は綜合教科書を作成することは不可能であった。しかしながら,図書局は,教材を関連させることによって,教師が綜合的に取り扱うことができる教科書作りに力を尽くしたのであった。さらに,教科書の編纂趣旨によれば,教師は教科書を基準として,カリキュラム開発を行うことが勧められたのである。

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© 2006 日本教育方法学会
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