教育方法学研究
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広島高等師範学校附属小学校の理会主義歴史教育論 : 大久保馨の理論と実践をもとにして
福田 喜彦
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2010 年 35 巻 p. 117-127

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抄録

本論文は,広島高等師範学校附属小学校の理会主義歴史教育論を大久保馨の理論と実践を手がかりに明らかにすることが目的である。広島高等師範学校附属小学校では,佐藤熊治郎が主事を担当し,精神科学の理論をもとに子どもの内面から起こる自発性を作用させる教授として「自発性の原理」を基軸にした各教科教授の実践を提案した。大久保は,国史科の訓導として『学校教育』に論考を寄せながら,多数の著書を執筆し,佐藤とも『国史教授の本質及び実際』を著している。本論文では,大久保の歴史教育論を「理会主義歴史教育論」と位置づけ,その理論がどのように形成され,実践されたのかを教科教育学的な視点から明らかにしている。結論として,第一に,現象の意味を掴むことを「理会」と捉え,対象の内面的生命や精神に触れることで価値や意義を見出し,私たちの「生」そのものが体験した追体験や自省した思惟の作用によって知識を得ることが歴史の理会だと示したこと,第二に,国史を批判することで,自らの人生の方向を暗示し,正しい道をたどることができると考え,児童の規範意識を培い,児童の価値意識を発展させようとしたこと,第三に,国史教育での「自己陶冶」を知的理会を伴う感情的興奮から自分も何かを成し遂げようとする意志を発動させ,目的に向かって努力することとし,理会に伴う「情意の陶冶」と「意志の発動」を「自己陶冶」と捉えていたことの3点を明らかにした。

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© 2010 日本教育方法学会
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