教育方法学研究
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研究論文
地域に根ざす環境教育論に関する一考察
藤岡貞彦と中内敏夫の比較を手がかりに
祁 白麗
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2021 年 46 巻 p. 49-60

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抄録

本稿は,主に1970,80年代における藤岡貞彦と中内敏夫の所論に着目し,彼らの環境教育に関する議論を地域に根ざす環境教育論として捉えることで,それぞれの内実を明らかにするものである。第一章では両者の教育観の異同,第二章では両者の考える環境教育の相違,第三章では地域に根ざすことの捉え方の相違を検討する。藤岡も中内も,地域に根ざすことで子どもの生活を教育に反映させることを志向する。 そして,子どもの生活を反映させることは,学校教育を問い直すことにつながっていく。ところが,それを問い直す主体も問い直される対象も異なる。藤岡にとって地域のあり方は,子どもの発達を保障する上でも,親や教師,他の地域住民の学習につながる点でも重要である。そして,環境教育の実践は地域の様々な主体が連携して行うものである。その中で,学校教育が問い直される際に,学校教育内容の創造だけでなく,教育制度の改編や施設の創設もありえる。一方,中内にとって地域は,子どもたちが豊富な素材を通して社会や自然の諸現象を体験できる身近な場所であり,それらの現象を認識する上で現在の学校教育の教育目標が科学的フィルターとして有効かどうかを検証する上で重要なものである。このように,藤岡と中内の描く環境教育論は,異同がありつつも,いずれも学校に対する批判的志向性を帯びている。それは,一種の活動やカリキュラムにとどまらず,教育全体を問い直す原理を内在するものである。

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