教育方法学研究
Online ISSN : 2189-907X
Print ISSN : 0385-9746
ISSN-L : 0385-9746
研究論文
MIDI を活用した幼児の音楽表現の記録と分析
― 幼児の姿を読み取る保育者との対話に着目して ―
仲条 幸一
著者情報
キーワード: 音楽表現, 保育記録, 省察, MIDI, ICT
ジャーナル フリー

2023 年 48 巻 p. 25-35

詳細
抄録

本稿では,T 幼稚園5歳児クラスの幼児21名の音楽表現について,MIDI(Musical Instrument Digital Interface)を活用することで詳細な演奏データを個別に生成する活動を実相し,保育における記録として位置付けた。その記録から,クラスを担任する保育者は,音・音楽を探索する個別の幼児の理解を深めることや保育の営みを改善する思索に貢献し得るのかを明らかにするために,保育者と共に対話形式で記録の読み取りを実施し,検討を行なった。 記録したMIDI 情報の読み取りにおいて,保育者は,幼児が音による表現方法を選択している姿や,幼児同士が影響を与え合いながら音による表現を試している姿を見出した。それらを具体的に,①奏者の演奏に「らしさ」を具体的に見出す場面,②奏者の演奏に普段の様子とは異なる姿を見出す場面,③他者の演奏に影響を受けている姿を見出す場面の3つの事例としてまとめた。 そして一連の考察の結果,MIDI を記録として活用することの教育的意義について,次の2点の知見を得た。 1つ目は,幼児が価値を感じている演奏内容の構成情報を可視化し詳細に捉えるといった「音高・音の長さ・ベロシティの観点から表現を分析するための支援」であり,2つ目は,保育者が個々の幼児の「らしさ」を表現内容のどこに見出し,再考するのかといった「表現する幼児への個別評価の検討」についてである。

著者関連情報
© 日本教育方法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top