物性若手夏の学校テキスト
Online ISSN : 2758-2159
第67回物性若手夏の学校
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細胞を擬2次元膜で包まれたミクロ3次元液滴として理解する
*柳澤 実穂
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p. 216-227

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抄録

生命現象の根底には数多くの物理法則が存在し、それは E.シュレーディンガーをはじめとする物理学者の興味を集めてきた。本講演では、生命の最小単位である細胞を、擬2次元膜で覆われたミクロ3次元液滴として捉え、細胞サイズの生体分子集合体が示す物性研究から、生命の物理的理解を目指すアプローチについて紹介したい。対象とする主な現象は、タンパク質1分子が示す分子拡散や、タンパク質集団が示す相分離・ゲル化などの相転移である。こうした現象はこれまで、目に見えるマイクロリットル量以上の体積スケール(以下、バルクと呼ぶ)に対して研究がおこなわれてきたが、細胞の体積は高々フェムトリットル~ピコリットルと少量である。こうしたミクロな系では、微小体積や表面を覆う膜の影響により、バルク系とは異なる分子挙動や相転移が観察される。本集中ゼミでは、人工細胞として用いられる液滴の説明から、バルクとは異なるミクロ系特異な分子拡散や相転移について説明する。また、これら細胞サイズ特異な現象が生じる要因について考察する。

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© 2023 柳澤実穂
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