物性若手夏の学校テキスト
Online ISSN : 2758-2159
第67回物性若手夏の学校
会議情報

核磁気共鳴の基礎と希土類化合物研究への応用
*與儀 護
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p. 281-292

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抄録
核磁気共鳴(NMR)は微視的視点から物質の電子状態を研究できる測定手法の一つである。NMRの最も多い利用例は共鳴スペクトル測定による有機化合物の分子構造解析だと思われる。これは原子核周りの微視的電子状態が分子構造により異なり,その結果として共鳴周波数が変化することを利用している。固体物性の研究においても,スピン磁化率など静的磁気特性の研究のために共鳴スペクトルの測定が行われている。また,NMRは緩和時間の測定を通して系の動的な性質(低エネルギー励起)に関する情報を得ることもできる。例えば,磁性体における磁気揺らぎや超伝導体のギャップ構造などの研究に用いられている。本集中ゼミでは固体物性研究への応用を視野に入れた核磁気共鳴の基礎について述 べた後に,Eu を中心とした希土類化合物への応用例を紹介する。静的磁気特性の測定例として,NMRスペクトル解析による磁気構造の研究について紹介する。具体的には,我々が最近行った Eu 化合物の磁気秩序状態におけるヘリカル構造と伝播ベクトルの NMRによる同定について説明する。また,NMR では核四重極能率を持つ原子核を用いることにより電気特性についても検出可能である。その例として,希土類元素の価数状態についてリガンド核の電場勾配の変化から見出した例について紹介する。最後に,動的特性の測定例として,Eu 化合物の価数状態と磁気揺らぎに関して紹介する。
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© 2023 與儀護
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