物性若手夏の学校テキスト
Online ISSN : 2758-2159
第67回物性若手夏の学校
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トポロジカル超伝導とその周辺
*佐藤 昌利
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p. 31-49

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抄録
トポロジカル超伝導体とその周辺物質を波動関数のトポロジーによって分類するというトポロジカル相の概念は、1980年の量子ホール状態の発見に起源をもつ。トポロジカル数によって状態を特徴づけるというアイデアやバルクのトポロジカル数と境界のギャップレス状態との関係 (いわゆるバルク・境界対応) という現在知られているトポロジカル相の基本的な性質は、90 年代の半ばまでに知られていたが、2000 年になる頃までは、量子ホール効果以外の興味深い現象は知られていなかった。そのような認識が変化することになる最初のきっかけの一つが、Reed と Green による量子ホール状態との類似性を用いた超伝導状態の研究である。彼らは、カイラル超伝導状態が量子ホール状態と類似のトポロジカル数で特徴づけられることに注目し、それによってカイラル超伝導体がギャップレスのエッジ状態や超伝導体渦中にゼロモードを持つことが説明できることを見出した。更に超伝導体特有の電子・正孔対称性によって、それらの状態がマヨラナフェルミオンとなること、またそれにより超伝導渦の統計性が単純なボース統計やフェルミ統計でなく、交換操作で新しい状態となる非可換エニオン統計となることを指摘した。この発見は、超伝導体がトポロジカル相として、量子ホール効果以外の特徴をもつことを見出したものであり、現在も広く興 味を持って研究が進められている。本講演では、トポロジカル超伝導体の話を中心にトポロジカル相の基礎および最近のトピックについて解説を行う。
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© 2023 佐藤昌利
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