抄録
本講義では,トポロジカル絶縁体とは,対称性を満たしつつかつ指数関数的に局在するWannier状態を構成できないようなBloch波動関数である,という観点から解説します.まず講義の前半で指数関数的に局在するWannier状態の構成における障害としてChern数を導入します.次に,Wannier状態の構成における対称性の役割を調べるために物理的に重要な対称性である時間反転対称性を取り上げます.さらに,結晶対称性の例として,空間反転対称性と Wannier 状態の関係について調べます.結晶対称性が導入されることで現れる絶縁体のクラスとして,「脆いトポロジカル絶縁体」と「高次トポロジカル絶縁体」について紹介します.時間が許す限り,結晶対称性とトポロジカルバンド理論の関係についても解説します.