物性若手夏の学校テキスト
Online ISSN : 2758-2159
第68回物性若手夏の学校
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核磁気共鳴を用いたスピン磁化率測定から見る超伝導
*北川 俊作
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p. 48-62

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抄録
核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)は原子核を用いて電子状態を調べる測定手法である。 大きな設備を必要とせず、 電子状態や結晶構造などを微視的に調べることができることから、 医療や生物、 化学など広い分野で活用されている。 固体物性の研究においてもNMRは重要な役割を果たしている。 例えば、 NMRスペクトルの形状からは磁気秩序状態などの秩序変数を同定することが可能である。 また、 核スピン-格子緩和率の測定を通じて磁気ゆらぎなど系の動的な性質の情報を得ることもできる。 NMRが物性研究で最も活躍する場の1つとして超伝導研究がある。超伝導の性質を調べるうえで、 スピン磁化率の測定は重要であるが、 通常の磁化測定ではマイスナー効果による大きな反磁性によって測定が困難である。 一方、 NMR測定では原子核と電子スピンとの強い結合によってスピン磁化率の測定が可能になる。 NMR測定を用いることで、超伝導電子対(クーパー対)が一重項か三重項かの判別や、 スピン磁化率の空間分布の情報を得ることが可能になる。 また、 スピン三重項超伝導体においては、 スピンの自由度に起因して、 磁場印加によって超伝導スピンが偏極することが理論的に提案されており、 最近では実験でも観測に成功している。本講義では、NMRの原理や基礎的な内容を概説した後、 超伝導研究への適用例について我々が最近行った実験結果を中心に紹介する。
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© 2024 北川 俊作
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