2010 年 10 巻 p. 63-78
本稿はデカルトとベークマンの往復書簡(1630-34年)への翻訳・注解である.その解題として,この時期の二人の状況,関連年表,書簡の内容とその解釈を記した.すなわち,1630年の2通には,デカルトの『音楽提要』は自分の教示によるものとベークマンが自慢したことに対して,前者の激烈な批判が展開されている.だが,かりに後者が本当に自慢したとしても,公平に見てデカルトがベークマンに負うところは大きい.デカルトは誇り高い人であったにせよ,先学に対して節度を越えた言いすぎがあったとしなければならない,と解した.