名古屋文理大学紀要
Online ISSN : 2433-5517
Print ISSN : 1346-1982
自画像にみるストレス
山田 ゆかり天野 寛
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2004 年 4 巻 p. 3-11

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抄録

大学生における適応障害の増加が指摘され,大学は,学生相談に訪れる学生に対して,心理的適応にこれまでになく配慮を必要とする事態に直面している.こうした問題意識を背景として,適応性のスクリーニングテストとしての"自画像"によるアセスメントの可能性が検討されてきた.そして,前稿までの検討で,自画像が適応性の査定に有効であること,また,学生においてはストレスレベルが一般的な平均レベルよりも全体的に高く,適応性にストレスが関与していることが明らかにされた(山田・天野,2002, 2003).そこで,本稿では,ストレスレベルと自画像にみられる適応性の指標との関連性を考慮し,ストレスが自画像での描画にどのように投影されるかを検討することを目的とした.その結果,自画像は,全体的な印象,顔の表情,特異な表現や不自然な表現,詳細さ,描画全体のバランスなどから,ストレス事態から何らかの行動化の可能性が指摘されるA群,ストレス事態に対する緊張・不安が強いS群,抑うつ的傾向が指摘されるD群,適応状態にあることが示唆されるN群,テスト事態に対する拒否的傾向や自己防衛的傾向が前面に出たR群の5群に分類された. 5群の自画像の描画には明らかに異なる特徴のあることが指摘され,特にA群ではストレスレベルの高さとストレス事態に対する行動化を表すサインの出現に明らかな関連性が認められたことから,自画像から適応性を査定することの妥当性が示唆された.

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© 2004 名古屋文理大学
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