名古屋文理大学紀要
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キリスト教神学における歴史認識 -仏教とキリスト教を比較して-
佐久間 重
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2004 年 4 巻 p. 23-31

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抄録

国際政治の中で民族問題が大きな比重を占めるようになって,宗教への関心が高まって来ている.そこで本稿では,仏教とキリスト教では現実の社会との関わり方でどのような違いがあるのかを考察することにする.社会との関わり方は,人間の歴史をどの様に捉えているのかと言う点に集約されると思われるので,二つの宗教に見られる歴史認識の違いについて比較することにする.諦念の宗教としての特徴を持つ仏教では,時間の流れそのものよりも,刻一刻のその時点に焦点を当てる見方を重視する姿勢が取られ,人生の目的とは何か,人生は意義があるのか,歴史とは何なのかと問うことよりも,今の時間が問題の中心になる.それに対して,歴史的啓示宗教であると言われるキリスト教では,「メシアの再臨」や「最後の審判」と言う言葉が象徴するように歴史が成就するのかどうかが重要なポイントとなるが,信仰によって究極の安定を見つけ出すことが出来れば,人間は歴史の中で誤った救済を求めなくなり,人間は歴史の中の責任を喜んで受け入れるようになる,と言う見方がされる.歴史の中の点に焦点を当てるのが仏教の特徴であり,始めから終わりに至る線を認識の対象とするのがキリスト教の特徴である,と言えるのではないだろうか.

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