名古屋文理短期大学紀要
Online ISSN : 2433-6548
Print ISSN : 0914-6474
西村本研究ノート
神谷 勝広
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キーワード: 西村本, 浮世草子
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1995 年 20 巻 p. 168-161

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抄録

近世小説研究は, 一部の有名作家(井原西鶴・上田秋成など)の作品を除けば, 基礎的調査すら充分といえない.このような状況では, 近世小説の特質を総合的に把握することは, 不可能である.すぐに注目されるような研究成果が出なくても, 今は, 他の近世小説について, 地道に基礎的調査のメスを入れていくことが大切である.これを避けることはできない.本稿では, 初期浮世草子である西村本-京都の書肆西村市郎右衛門が作者あるいは版元として関与した小説-を取り上げる.西村市郎右衛門は, 「好色文の達人筆を振うて西鶴を消す」(『元禄大平記』)と評されたほどであるが, 現在まで充分な基礎的調査がなされていない.特に, 典拠調査は不備である.したがって, 典拠調査の充実がまず必要であろう.この典拠調査を行うに際し, 二点に注意しなければならない.一つには, 典拠調査の間口を, いわゆる小説ジャンル(あるいは近接するジャンル)の先行作品に限定せず広く取ることである.もう一つは, 典拠を確定した後, どう表現の方法の問題へ転換していくかを考えておくことである.

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© 1995 名古屋文理大学
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