年金研究
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特集:論文
第4回 独身者(40~50 代)の老後生活設計ニーズに関する調査: 独身女性における過去の調査との比較
長野 誠治
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2016 年 3 巻 p. 189-209

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抄録

(1)今回で「独身者の老後生活設計ニーズに関する調査」は4回目になる。本論文では独身女性について第2回から第4回までの調査結果について比較検討した。その結果 によると、今回、彼女らの雇用は回復しつつあるが、収入は伸びず、親と同居している人の割合が増えている。また、最も充実感を感じられるのは、一人でゆったりと休養している時で、老後のことはあまり考えていない。これが40~50代の独身女性の全般的なイメージである。

(2)仕事については、雇用の回復傾向がうかがえ、第3回調査では「正社員」の割合がリーマンショックの影響から大幅に減少したが、今回調査では小幅増加するとともに、 「無職」の割合が減少した。現在の仕事の継続期間は、第3回調査に比べて勤続10年を境にして、それより短い期間の割合が減り、長い期間の割合が増加している。なお、60歳以降も働きたいという意向は今回調査では後退している。

(3)家族・家計については、第3回調査に比べて一人世帯の割合が減少している一方で、親と同居している人の割合は第2回調査以降、一貫して増加傾向にある。世帯収入は、 全体として徐々に下方へシフトしてきている。本人の仕事の収入は「200万円以上300万円未満」が引き続き最頻値になり、回答した人の割合も増加傾向にある。世帯の生活費(月額)も収入と同様に下方へシフトしており、第3回調査に比べて「10万円未満」と回答した人の割合が増えている。老後のための資産形成は、「預貯金」という回答が7割を占めている。保有している金融資産額は、第3回調査に比べて2極分化の傾向が強まってきている。

(4)住まいについては、現在の住まいが「親の持ち家」と回答した人の割合が増加傾向にあり、今回調査では44%になっていた。一方、「賃貸住宅」は漸増傾向、「自分の持 ち家」という回答は減少傾向にある。「老後も現在の住まいに住み続ける」という回答は増加傾向にあり、今回調査では6割に達した。

(5)今の生活について、最も充実感を感じるのは「一人でいる時」や「ゆったりと休養している時」(第2位から第1位へ順位は上昇)、「特にない」の回答割合がそれぞれ増加する一方、「趣味やスポーツに熱中している時」が大幅に減少して第2位に転落した。生活の満足度は、生活全般や仕事の内容は過去調査から横ばい推移、収入や資産・貯蓄は「不満」と回答した人の割合が「満足」の割合を引き続き上回っているが、その差は縮小傾向にある。

(6)老後の生活については、「生活設計をまだ考えていない」という回答が過半数を占め、その割合は増加傾向にある。老後の1ヵ月の生活費予想は、過去調査に比べて金額が上方にシフトしている。収入源は、「公的年金」「預貯金」「仕事による収入」の順となっており、過去2回の調査と変化はない。将来、自分に介護が必要になった場合の対処方法は、「在宅介護を利用」が第1位になる一方、前回調査でトップだった「公的介護施設に入所」は回答割合が大きく落ち込んで、第2位に落ちた。

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© 2016 長野誠治
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