日本の政治学では, ジョヴァンニ・サルトーリの類型論が支配的地位を占めてきた。しかし, サルトーリの類型論は, 少なくとも原型のままでは有用性を喪失している。1988年から94年の 「政治改革」 以降, 政党システム=選挙制度をめぐる争点は<政権選択可能な二大政党制=小選挙区制か, 民意反映可能な穏健多党制=比例代表制か>へと移っている。ところが, サルトーリの類型論は二大政党制と穏健多党制の相違を過小評価しているため, この問いに答えることができない。我々に必要なのは, このギャップを埋めるため, サルトーリの類型論を修正することである (第4節の表3を参照)。この修正類型論を採用すれば, 政党システムをより構造的に分類できるようになるであろう。のみならず, 穏健多党制を多極共存型・連立交渉型・二大連合型に下位類型化することで, 政権選択可能かつ民意反映可能な政党システム, すなわち穏健多党制 (二大連合型) を特定することができるようになるであろう。