アメリカの司法は, 日本の司法とは対照的に, 違憲審査権を積極的に行使して国政に大きな影響を及ぼしている。だが, 違憲審査権の積極的な行使は政治部門による攻撃を引き起こすおそれがある上, 民主主義原理と緊張関係に立つとされることから, 司法が違憲審査に対して積極的な姿勢をとることは, 政治力学の面でも規範的な面でもたやすいことではない。それにもかかわらず, なぜアメリカ司法は違憲審査に積極的な姿勢をとりうるのであろうか。
本稿は, この問いに答えるため, はじめに司法行動の規定要因を理論的に考察し, 司法が違憲審査権を積極的に行使するためには一定の資源を保有している必要があることを明らかにする。その上で, アメリカ司法にそのような資源を供給している制度とアクターを体系的に提示・検討する。このような作業は, 司法過程を政治学的に分析する際の基本的な視角と手法の蓄積に寄与する点で, これまで司法政治研究がほとんど取り組まれてこなかった日本において意義を有するであろう。