2018 年 69 巻 1 号 p. 1_171-1_201
政治と司法との関係を裁判所の制度的定着過程から分析することを目的とした本稿は, 1960年代から70年代にかけての国際司法裁判所の危機とその収拾過程を歴史的に解明する。南西アフリカ事件の判決によって, アジア・アフリカ諸国から批判された裁判所は, 付託件数が僅少になるという事態に立ち至った。裁判所は, 国連総会に所長以下が出席してそのプレゼンスを強化するとともに, 裁判所移転問題としての国際司法裁判所規程第22条改正を総会の議題となるよう働きかけて, 総会での裁判所改革の論争に能動的に対応しようとした。こうした国連の諸機関との外交交渉を通じて, 裁判所は単なる孤立ではなく能動的な中立を志向する。結果的に裁判所は, 1970年代に規程改正を取りやめるが, 裁判所棟増築を実現させ, 徐々に付託件数も増えることで制度的定着を果たしたのである。