年報政治学
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〔公募論文〕
地方紙の普及率低下は投票率を下落させるのか? :
鹿児島新報の廃刊という自然実験的事例と参院選パネルデータの分析
金子 智樹
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2018 年 69 巻 1 号 p. 1_202-1_224

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抄録

日本は長年 「新聞大国」 と称されてきたが, 新聞発行部数は近年になって急速に減少しており, 市民の政治参加に対する影響が懸念されている。本稿は, 新聞の中でも特に地方紙に注目し, 異なるリサーチデザインを用いた2つの分析を行うことで, 「地方紙普及率の低下は有権者の投票参加に悪影響をもたらしている」 という中心仮説を検証する。1つ目の分析では, 鹿児島県の地方紙である鹿児島新報が2004年参院選の直前に突然廃刊されるという自然実験的事例に注目し, 鹿児島新報の普及率が高かった地域ほど, 2004年参院選において投票率が相対的に低下したことを示す。また2つ目の分析では, 2001年以降の6回の参院選における都道府県別投票率と新聞普及率のパネルデータを用いて, 都道府県や時点の固定効果などの変数を統制してもなお, 地方紙普及率が投票率と統計的有意に正相関していることを明らかにする。地方紙普及率が低下することで有権者が政治や選挙に関する有用な情報に接触する機会が減ってしまい, 投票参加が抑制されると考えられる。

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© 2018 日本政治学会
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