年報政治学
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《特集》
ポスト冷戦期における日本政治の対立軸
―「革新」・「保守」・「改革」をめぐって
大井 赤亥
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2020 年 71 巻 1 号 p. 1_106-1_127

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抄録

冷戦終焉に伴う 「革新」 の一方的衰退をへて、1990年代以降の日本政治は、コンセンサス型意思決定によって利益配分を担ってきた 「守旧保守」 と、強いリーダーシップによって行政機構の縮小再編成を断行する 「改革保守」 との対立軸へと変容した。ここにおいて支配的趨勢となったのは 「改革保守」 であり、「改革」 が 「革新」 を代替して現状打開のための結集軸を担うようになった。

 親社会主義と憲法9条を旗印とした 「革新」 と、規制緩和や民営化と日米同盟を基軸とする 「改革」 とは似て非なるものである。55年体制下において 「革新」 が左から自民党政治を攻撃したとすれば、ポスト冷戦下においては 「改革」 が自民党政治を右から解体しようとしたのであり、その方向性において二つのシンボルの出所は真逆であった。

 しかしながら、「革新」 と 「改革」 とは、いずれも官僚主導や自民党の利益配分政治を否定する点において類似してもきた。二つのシンボルはいずれも現状変革の結集軸となり、ある種の等価物として機能してきたのである。

 本稿はそのような 「革新」 と 「改革」 の意図せざる共振と 「改革」 が孕んだ二面性を考察するものである。

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