年報政治学
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《公募論文》
時限法の実証分析
―離散時間ロジットモデルによる存続要因の導出
三谷 宗一郎
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2020 年 71 巻 1 号 p. 1_152-1_177

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抄録

ひとたび成立した政策を終了させることは容易ではない。政策の不必要な継続を回避し、円滑な終了を促す目的で、米国では1970年代から州政府レベルの立法過程において、法制定時に当該政策の失効期限を定めるサンセット条項が急速に普及した。日本には、類似する立法技術として失効条項や廃止方針条項を付す法律 (以下、時限法) が存在するが、その運用実態は判然としない。時限法は当初の期限通りに失効しているのか、どのような時限法がなぜ存続するのかを明らかにし、政策終了論および立法過程論上の空白を埋めることが本稿の目的である。研究の結果、⑴戦後制定された時限法は全208件で、そのうち約半数が当初の期限通りに失効しておらず、中には最大12回延長され、半世紀以上も存続する時限法が存在していたこと、⑵時限法のうち、衆議院議員提出のもの、国土開発分野のもの、法律補助規定を有するもの、制定当初の失効期限が5年以上に設定されているものは存続する確率が高いことが明らかになった。一部の時限法は、失効期限が到来するたびに票と利益を交換する機会を創出し、関係議員の再選可能性に寄与しているため、予定されている期限通りに失効しないという矛盾を抱える可能性があると考えられる。

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