年報政治学
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《公募論文》
官僚制への統制手段としての審議会
―政権党による 「手続的指示」 の数理的・定量的分析
池田 峻
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2020 年 71 巻 1 号 p. 1_316-1_340

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抄録

代議制民主主義において、有権者から選出されていない官僚を政治家はいかに統制しているのだろうか。本研究は、政治家が審議会への諮問の強制という手段を用いて統制を行っていると主張するものである。

 審議会は行政の民主化などを目的に設置される行政機関であるが、その実態は官僚が望む政策を追認する 「隠れ蓑」 に過ぎないという見方が根強く残る。これに対し本研究は、政治家が法令に 「○○審議会に諮問しなければならない」 旨 (これを手続的指示と呼ぶ) を書き込むことによって、官僚の逸脱を防ごうとしている側面があることを示してゆく。

 では、いかなる条件で手続的指示が行われるだろうか。本研究ではゲーム理論を用いて政権党・官僚制・審議会の関係を定式化し仮説を導出したあと、2002年時点に存在する全ての審議会を対象とした計量分析によってそれを検証する。

 分析の結果、①政官の理想点の乖離が大きい、②審議会の権威が小さい、③審議会と政権党の理想点が近い、④政権党が現状の政策に不満を持っているという四つの場合においてより多くの手続的指示が行われることが明らかとなった。この結果から、官僚は政権党の戦略によって審議会を利用させられており、審議会が統制手段として用いられているという見落とされてきた側面が浮かび上がる。

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