年報政治学
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《公募論文》
中選挙区制と政党間競争
勝又 裕斗
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2020 年 71 巻 1 号 p. 1_368-1_392

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抄録

選挙制度は有権者の選好を議席に変換する重要な制度である。戦後日本においては衆議院、参議院、そして、地方議会の選挙に至るまで中選挙区制が採用されてきた。55年体制においてほぼ全期間で絶対多数を維持した自民党は、この選挙制度による恩恵を受けていたのであろうか。これに対して既存研究では、中選挙区制において大政党だけが候補者擁立戦略の問題に直面するため、中選挙区制は大政党にとって不利であると指摘された。後続の研究は自民党がこの課題を克服できたのか否かを巡って論争してきたが、これらの研究の多くが政党の得票率を所与として分析を行ってきたため、得票率自体が中選挙区制の影響を受けるという重要な視点が見落とされてきた。中選挙区制によって各政党の得票率がどのような影響を受け、それがどのように議席数に反映されたのかを分析した結果、自民党が総合的に少し議席を減らしたのに対し、社会党は総合的に大きく議席を減らしたことが明らかになった。中選挙区制は第二党である社会党に不利にはたらくことで結果的に自民党に有利にはたらいてきたのである。

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